ダンスユニット・かえるP

かえるPスペシャル

スーパースーハー スペシャルコンテンツ Vol.1「稽古場Report」

かえるP、8回目の新作公演「スーパースーハー」。いよいよ本番まで2週間を切りました。
今回の新たな試みとして、スペシャルコンテンツを企画しました。
第一弾は、尾上そらさん(演劇ライター)による稽古場レポートです。
これまであまり外に出ることのなかった創作や稽古のようすが、尾上さんの目を通してテキストに起こされることで、
違ったかたちで作品の様相が立ち上がります。
是非ご一読ください!!

かえるP『スーパースーハー』
稽古場Report編

 稽古を見る。
 というのはすなわち、創作の過程を垣間見るということで、取材者にとっては貴重な機会だ。ただ決まった戯曲をガイドラインに進行することが多い演劇とは違い、ダンスの稽古はその日フラリと訪れた者には、今が全体のどの辺りを、どのくらいの精度で創りつつあるかなどは、計りようもない。
 初めてお邪魔したかえるPの稽古は、まさにそんな、謎めいた様相を呈していた。
 現場に入ったのは、その日の稽古開始から一時間ほど経過していたであろう頃。ダンサーの発する熱気で、室内は軽くサウナ状態だが、ダンサーたちは黙々と身体を動かしている。

7月2日・都内稽古場にて

かえるPは大園康司、橋本規靖の二人からなるユニット。今回はそこに小野彩加、金子愛帆、新宅一平の三人が加わっている。
 稽古場の大部分を使って行われていたのは、小野の動きを大園が少しのズレで追いかけながら、振りを重ね、交錯させる、というシークエンス。
​一連の流れを橋本が見つめ、タイミングや描く軌跡を微妙に調整していく。その後ろで金子は、しなやか自在に身体をたわめ、あやとりでもしているかのような動きを繰り返し、右手の鏡前では新宅が不思議なポーズを研究している。といって、金子と新宅が自分の作業に没頭しているのかと言えばそうではなく、どこに視点を置いているのか、大園・小野組の創作について、気づいた言葉を的確に挟んで来るのが興味深い。
「最後は“泥”になっていけない?」「そこは“マグロ”じゃないかな」「次は“シュルシュル”、二人からやってみようよ」「そこから“スーハー”になりたいんだけど」。
 独自の言葉で創作過程を説明・共有することは珍しくないが、「かえるP用語」はひどく謎めいている。続く振りや動きを見れば、「あぁ、なるほど」と思うこともないが、見ても脳内の「?」が消えないシークエンスもしばしば。それでも、五人の中には時を追うごとに共通認識が生まれ、目の前の動きがは少しずつダンスになっていく。
 稽古の終盤は“シュルシュル”の精度を上げていく取り組み(に、私には見えた)。小魚や鳥の群れのように互いの距離を保ち、時に回転し、時にポジションをクロスしながら稽古場の内径いっぱいをなぞるように軌跡を描いていく。

7月2日・都内稽古場にて

「ターンのポイントごとに、リードする人を決めないと無理じゃない?」「いや、予定調和にしたくないんだけど」。
 大園と橋本の言葉がぶつかる。振付も演出も明確な分担ではなく、必要なだけ議論を重ねる民主的な創り方をしているという二人。よほど互いを信頼していなければできない、第三者には面倒なその過程が、二人にとっては贅沢な時間なのかも知れない。
 あっという間に二時間が過ぎ、稽古場を出ねばならぬ時刻に。そそくさと着替え、片づけた二人に、場所を変えて今度は、新作の展望やかえるP独自の創作のツボについて聞くことにする。

text by SORA Onoe