ダンスユニット・かえるP

かえるPスペシャル

スーパースーハー スペシャルコンテンツ Vol.2 インタビュー編

歩みはゆっくりながらも、8回目のフルスケール作品の上演となります。
 今回の新作公演「スーパースーハー」では、かえるPがこれまで表立って行ってこなかった、“どうやって作っているのか?”“作品のはじまりは?”など、かえるPの謎について、言葉にして、ひも解く機会を試みました。
 その第一弾として、スペシャルコンテンツ・演劇ライターの尾上そらさんによる稽古場レポートを掲載しました。今回は、その第二弾、尾上さんによるインタビュー編です。
 
 尾上さんが稽古場で見た、不思議な稽古風景の謎解き編になっていますので、まだ稽古場レポートを読んでいない方は、そちらを先に読むことをお勧めします。

スーパースーハー スペシャルコンテンツvol.1 稽古場レポート編

「スーパースーハー」稽古場@横浜(7月)

タイトルが全ての始まり

​ リハーサルを終え、最寄りJR駅近くのホテルのカフェに落ち着き、取材開始。創作の過程について、大園と橋本に話を聞き始める。まずは以前から気になっていた「タイトル」について。前回の『パーフェクト』など、作品内容をどこかはぐらかし、観たあとに関連性を観客に考えさせるようなネーミングはどこからやってくるのか?

大園「創作は、いつもタイトル決めから始めます。今まで全部そうでした。橋本と二人、その時に興味のあることを、ホワイトボードに書き連ねるネタ出しをやっていく。そこでピンと来た言葉に、後から意味づけするようにダンスをつくることも結構あるんです。そんな直感的に決めたタイトル=言葉に追いつくため、創作を進めていくという感じでしょうか」

橋本「その作業は『笑点』の大喜利みたいなんです。出てきた言葉を色々組み合わせ、どうすれば面白くなるか延々と二人で考える。『スーパースーハー』は、ちょうどネタ出しの時期に僕が呼吸に関する本(五木寛之「呼吸の発見」)を読んでいて。“ダンスの身体性と、呼吸法などもっと絡められたら面白いのに”と以前から考えていたもので、最初は“○○呼吸”みたいな言葉を出していたんですが、少し前に擬音語から振付ける、という作業をしたことから、“呼吸を擬音にしたらスーハーだよね”という発想が湧き、展開してこのタイトルになりました」

大園「文字面を見ると本当にクダらない(笑)。でもタイトル含め、作品のどこかに必ず遊びは欲しいと思っているんです」

 確かに、今回のタイトルはチラシのビジュアル含め、遊び心というか、一種の脱力感が漂う不思議なテイストに仕上げられている。だが、先刻目にした稽古は脱力などほど遠い、ハードなシークエンスも多く、そこにどんな過程があったのかをさらに訊いてみる。

大園「タイトルで大枠を決めても、その一点を掘り下げるようなつくり方をかえるPはあまりしないんです。経験上、突き詰めても良い結果が出ない感じがあって」
橋本「そう、突き詰めていくのとは真逆に、周辺のあちこちに穴を掘ってみる、というのが始まり」
大園「お互いの持っているものも、興味の在り処も僕らは全然違っている。その二人が互いのダメなところはダメ、良いところは良いと言い合い、共有して作品に反映させていく。掘り下げよりも、広く面を広げて素材を収拾・集積し、作品を立ち上げていくのが僕らのやり方なんだと思います」
橋本「今日の稽古はほぼ僕がメインに動くシーンでしたが、ある程度のところまでは二人それぞれ勝手に必要だと思うシーンをつくっておく。それが全体のどこに位置するか、何を担うかは、ある程度つくり溜めてから考えます」

「スーパースーハー」稽古場@横浜(7月)

目の前の「次の10年」を考えながら

​ 過去作品では二人それぞれの振付作品に、互いにダンサーとして参加することもあったが、連名での振付作品では、どちらかがイニシアティブを取るのではなく、全く対等に作品に臨んでいるという。時には先に意見を言った者勝ちで決まることも。また、作品の方向性を決める際には、テクニカルスタッフとの意見交換を非常に重要視しているとのこと。

大園「テクニカルスタッフとは、かなり多くのことを共有していると思います。特に舞台監督の熊木進さんと音響・林あきのさんは、かえるP旗揚げから一緒にやっているので、僕らが出した素材を一緒に料理してもらう局面も少なくありません」

 熊木と林はテクニカルスタッフの職域以上に創作に深く関わり、貢献してくれているとのことで、演劇におけるドラマトゥルクのような一面も持つとのこと。非常に民主的な過程と、そこから生まれる独特の凹凸を持った作品群。多様な価値観、創作への志向が入り混じり、そのエキスを抽出する集団創作的な手法が、かえるP独自のカラーを醸し出しているに違いない。「かえるPの作品は、テクニカルスタッフにとっても“一緒に作っている”感が強いと思います。」と二人は無邪気に笑っているけれど。
 あるようなないようなルールのもと、楽しくも過酷な創作を重ねる、かえるP。活動8年目に突入した二人に、改めて互いをどう見ているかも訊いてみた。

大園「最初からあまり変わらず、(橋本は)自分にはないものを持っている人。最近はさらに、興味の方向がどんどん違ってきていますし。最初は気軽な気持ちで始めたんですよ。互いの作品にダンサーとして出てもらっているだけで、こんなに長く一緒に創作するとは思っていなかった。プライベートで仲良いわけでもないから、“芸人のコンビ”みたいとよく言われるし(笑)。でもお互いの見てるもの、考えていることにはずっと興味が持てる。どちらかと言えば、橋本が深堀りしていることの周辺を、僕があちこち掘り散らかす感じでしょうか。今のところは」
橋本「そう、僕らビジネスライクな関係です(笑)。ビックリするほど色々な志向が正反対ですし。(大園は)器用だなと思う。色んなことにトライするし、コミュニケーションを取るのも上手いし。僕は不器用だけど、そのぶん“身体大好き”で、仕事も含め常にそのことを考え続けている。逆に大園は興味が向く方向が多彩で、彼に掴まっているだけでアチコチ自分では見えない景色が見えて来るので、刺激的な乗り物に乗っている感じがします(笑)」

 対照的な二人が意図的に、公平に、異なる視点や興味を混ぜ合わせてつくる、マーブルなかえるPワールド。互いを裏切ることで創作を更新していくその流儀は、新作『スーパースーハー』でも比類ない世界観を立ち上げ、また新たな地平を見せてくれる予感がする。

大園「20代も終わり、今は次の10年を考える時期。活動初期は“80代になったらどうしてたい?”“理想の死に方は?”みたいな遠大な話をよくしていたんですが、最近は目の前の30代をどう歩むべきかを考えられるようになったので、少しは成長したのかな、と(笑)」

​ 人間より、だいぶ視界の広いかえるたちには、世界も人生の展望も、彼らにしか見えない構図で見えている。その奇妙で思い切りの良い不思議な世界観に、振り回されることを今後も楽しみにしたい。

「スーパースーハー」稽古場@横浜(7月)

text by SORA Onoe

​かえるP vol.08「スーパースーハー」2017年7月26日(水)〜30日(日)@こまばアゴラ劇場 ▶公演詳細